29歳エリート医師、生れて初めて怒られる?
29歳エリート医師、生れて初めて怒られる?
20年近く前、健康診断で再検査となり、結果、大腸にポリープが見つかり、
無事にそのポリープを摘出することができました。早期発見ができて良かったです。
以来、念のため、何もなくても、年に1回大腸の内視鏡検査を行っています。
今年も、昨日その検査をしてきました。
大腸の内視鏡検査って、結構大変なんです。
前日は食事制限、当日は朝から絶食して、
数時間かけて下剤を2リットル飲んで、腸を空っぽにして検査に臨みます。
昨日も朝7時から下剤を飲み、昼から病院に行き、
血液検査・心電図検査を終え、検査着に着替え、いよいよ検査です。
検査台に寝そべり、鎮静剤(麻酔薬ですね)を投与するための点滴の準備をして医師を待ちます。
担当してくださる医師の方は、20年近く前から私の担当をしてくれている、ベテランのN先生です。
ところが、昨日は、そのN先生ではなく、見た目がとても若い先生が来られました。
「あれ?」っと思っているうちに、鎮静剤を投与され意識がなくなっていきました。
目が覚めた時には、検査は終わっています。
鎮静剤の効果、すげえ。
例年、そうでした。
ところが、昨日は、痛くて目が覚めました。
「あいたたた、先生、痛いです」
「もうすぐ終わるから大丈夫」
「あーそうですかー、じゃあもう終わるんですね」
「あれ?ここ、なんか難しいな」
「先生?」
「あー、ここ、うまくいかないなー」
「先生、まだ終わらないなら鎮静剤をー」
「・・・・(無言)」
「先生!」
「・・・・」
みかねた看護師さんが、私の頭をなでてくれます。
なんて優しい看護師さん。
でも痛みは消えません。
先生は無言です。
痛みは消えません。
・・・そして、気づいたら、検査は終わっていました。
どうやら、鎮静剤を再度投与してくれて眠っていたようです。
先ほどの優しい看護師さんが、私が目覚めたのに気づき、来てくれました。
「お目覚めですね。今回は大変でしたね~」
「はい、なんか私騒いでましたよね」
「あの状況では仕方ないですよー」
「お騒がせしました」
「ドクターは看護師の言う事なんか聞いてくれないから」
「でしょうね」
「あの先生は特にね」
「そうなんだ」
「さっきの先生と話をします?」
「はい?」
「先生に言いたい事あるでしょ?」
「・・・まあ」
「でしょ?私セッティングしますよ。先ほどの患者さんが話をしたいって」
「僕はそれほど話をしたいとは思わないけど」
「まあそう言わずに」
「うーん」
「ね?言いたい事あるでしょ?いい機会だし」
「はあ・・」
という訳で、どこがいい機会なのかはわかりませんが、
望んだわけではないのに「患者がクレームをいれ、担当した医師と面談する」という
事態になってしまいました。
看護師さんに「ちょっと待ってて」と言われ、ぼっーと待っていると、いつものN先生が現れました。
「イヤー今日はごめんなさいねー、オペレーションのミスで違う先生になっちゃったみたいで」
「はあ」
「で、あの若いの、やらかしたんだって?」
「まあ」
「これから話をするんやろ?いい機会だから言ってやって」
「はあ」
いい機会なのか?
何が?
先ほどの優しい?看護師さんが再び現れました。
「あちらの部屋で先生がお待ちです。上司も一緒です」
上司も?
その部屋に入ると、検査をしてくれた若い先生と、上司らしき女性の先生が待っていました。
改めて、その担当してくれた先生を見ると「若いなぁ~」と感じ、思わず聞いてしまいました。
「先生、お若いですね。おいつくですか?」
「29歳です」
やっぱり。
きっと勉強が良くできるエリートなんだろうなぁ。
って、感心している場合ではありません。
せっかくの「いい機会」なのだから。
「先生、鎮静剤の量、いつもより少なかったですか?」
「まあ、結果的にはいつもより少なかったですね」
「どうして少なくしたんですか?」
「早く終わる自信があったんで」
「でも早く終わらなかったんですよね」
「早く終わる予定でした」
若きエリート先生、ムッとしています。
私の質問に、かぶせ気味で応えてきます。
「途中で目覚めて痛かったので、鎮静剤入れてってお願いしましたよね?」
「もう終わると思ったんで」
「でも終わらなかった?」
「もう終わる予定でした」
なかなか手ごわいです。
「なので、何回か、鎮静剤のお願いをしたのですが」
「聞こえなかったです」
なんか、アホらしくなってきました。
加えて、鎮静剤明けでぼっーとしているので、私も「いつものキレ」がありません(笑)
元々、私が面談を望んだわけではありませんし。
昨日の夜に素うどんを食べてから、20時間くらい何も食べてないし。
早く帰りたい・・・
ここで、上司登場です。
「あのね、君ね、この患者さんが言っていることを真摯に聞こうとしないで、自分の都合しか言ってないじゃないの」
「・・・」
「せっかく、患者さんのお話を聞くいい機会なのに、君の態度は良くないよ」
「・・・」
上司、私に向き直ります。
「すみません、この先生には私からきつく言っておきますので」
「はあ」
「今日は申し訳ありませんでした」
「はあ」
という事で、私の活躍がゼロに近いまま、面談は終わりました。
果たして、私は、あの優しい看護師さんの期待に応えられたのでしょうか?
多分、来日してもほとんど活躍できず、
すぐに名前を忘れられてしまうような助っ人外国人並みに期待外れだったのでしょうね。
私は私で、心の中で看護師さんに謝ります。
「今日は申し訳ありませんでした」