ある日の密着24時
「お腹空いたな~。」と起き上がる。
目覚ましの音が鳴っている。カーテンからは朝日が部屋に差し込む。
「そろそろ起きて!朝ご飯の時間やで!」
朝ごはんを用意してもらい、元気に頬張る。
「お腹いっぱいになったら眠たくなってきた。ちょっとだけ寝よう。」
食べてすぐに寝ると牛になるらしいが、そんな迷信は信じていない。
「う~ん、よく寝た。1回トイレ。」
まっすぐトイレに向かい、あることに気づく。
「あれ?トイレ掃除してくれたん?綺麗になってる!」
綺麗なトイレでゆっくりと用を足す。その後はゆっくりする間もなく、
「ちょっと一緒に遊ばへん?」
「いいで!鬼ごっこしよ!」
弟は鬼ごっこが好きだ。2、30分ほど走り回った。
「疲れたからちょっと休憩。朝残してたごはん食べるわ。」
残っていたごはんを綺麗に平らげたところで
「ご飯食べたら眠たくなってきた。体も動かしたことやし昼寝しよう。」
この切り替えの早さが長所の1つだ。
目を覚ましグーンと伸びをする。
「結構寝たな。あいつ暇そうやから遊んでもらお。」
近くで寝ている弟を起こす。「なんて自分勝手な」とよく言われるが
「しゃあないな~。今度はサッカーな!」
とてもいい弟をもっている。
「やっぱり遊んだら疲れるなぁ。ちょっと休憩。」
そう言うと水を飲み、そろって横になった。
「うわっ、気付いたら寝てしまってた!」
窓の外を見ると、あたりはもう真っ暗だ。
「もうこんな時間か。あっ、晩ごはんって言ってる!お腹も空いたことやしラッキー!」
今日1日何も食べていなかったかのように晩ごはんにがっついた。
「もうお腹いっぱいや。ちょっとだけ遊んでこようかな。」
落ちていたおもちゃを転がし、追いかける。
食後ということを忘れさせるほど激しい運動も難なくこなすことができる。
「そろそろデザート食べたいな。言ったらくれるかな?」
「くれるんちゃう?ちょっと言ってみてよ。」
「わかった。デザート頂戴!デザート頂戴!」
突然のおねだり。そんなに簡単にもらえるはずが無いことはわかっているが、
チャレンジすることに意味がある、と誰かが言っていたような気がする。
「えっ、くれるん?しかも大好きなやつ?ラッキー!」
とても甘やかされて育っている、とよく言われる。
「俺が先やからな!」
「なんでやねん!俺がおねだりしたんやから俺の物や!」
取り合いが始まる。もちろん怒られ、今度は行儀よく食べる。
「デザートおいしかったなぁ。もうちょっと遊ぼうかな。」
「もう食べ終わったん?早いな。」
「先遊んでくるから食べ終わったら来いよ!」
デザートを食べた分は走って消費すればいい。これも誰かが言っていた。
家中の電気が消され始めた。
「え?もう寝る時間?早すぎるって!夜はまだまだこれからやで!」
子どもとは思えない発言。あきれて放って行かれたがお構いなし。
「次は何して遊ぶ?」
「じゃあボルダリングしよう!」
そう言うと弟はカーテンを必死で登り始めた。負けじと後を追い始める。
「次はサッカーな!」
「この落ちてるやつボールにしよう!」
「次はプロレスごっこしよう!」
「痛い痛い!それ反則やで!」
「もうクタクタや。今日も楽しかったわ。」
「もう眠たくなってきた。充電切れや。おやすみ。」
「部屋散らかしたままやけど朝片付けてもらおう。おやすみ。」
温かい布団に潜り込み、楽しかった1日が終わる。
「健康に、元気に過ごしてくれたらそれでいい。
カーテンをよじ登って遊んだり、在宅勤務中にパソコンのキーボードに乗って解読不能な文字を打ったり、リモート会議の画面に乱入してきたとしても。」
ぐちゃぐちゃにされたティッシュを拾い集めながらそう話す飼い主に撫でられ、
うっすらと目を開けた。外はまだ薄暗い。
「そろそろお腹空いてきたけど、もうちょっとだけ撫でさせてあげよう。」
再び夢の中へ。ニャリンピックの続きが始まった。