テープレコーダー先生
40歳を目前にして、自動車免許取得の為に1カ月間自動車教習所へ通いました。
学校と呼ばれる所に通うのは、20年ぶりくらいで、
高校生や大学生に交じって生徒として教えて貰える環境が少し楽しみでもありました。
ある日、所内の技能教習で出会った、50代半ば~60歳くらいの男性指導員。
車に乗るまでは人当たりの良いおじさんなのですが、いざ教習が始まると、
めちゃくちゃ早口!しかも全く抑揚なく同じトーンでひたすら喋る、喋る、喋る。
それはまるでテープレコーダーに録音した市場のせりを聞いているような感覚で、
正直、音は聞こえるけど内容は全く入ってこないという状態でした。
何度か聞き返すも、聞き返したところでテープレコーダーが巻き戻されるだけの話で、
「仕方ない、今日は勘でやろう」と決意しました。
ただ、勘で出来るほど勘の良い人間ではないので(笑)、
結局先生の意図とは全く違う動きをしてしまっていたようです。
イライラする先生。何度も再生されるテープレコーダー。
何故か車から降りて前方で手を上げる先生。
え?はてな顔の私。
ついにキレる先生。車に戻り、大きなため息。
「何を聞いてたんや!あれだけ説明したのに、わからんやっちゃなぁ!」
ついにキレる私。
「先生、さっきから何言ってるか全然わかりません。
先生は何十年も毎日同じ説明をしてるかもしれないけど、指導員という立場なら、プロとして、
初めて学ぶ人に対する説明の仕方を勉強したほうがいいですよ。
テープレコーダーみたいに、口が勝手に動いて音が鳴ってるだけですよ。」
《しまった、言い過ぎた…》と思った時には、既に車内は凍り付いており、
あんなに饒舌だった先生の口は真一文字に閉じられ、
もう二度とテープレコーダーが再生されることはありませんでした。
やはり、教習所は学生のうちに通うべきだったなぁ…と、反省した出来事でした。