ニベア ~背中とかゆみと、時々オトン~
以前、大阪府内の実家へ帰った時のこと。
風呂から上がった父が、パンツ一丁の状態で、
棚からごそごそと何かを取り出していました。
出てきたのはニベアと孫の手。
うちに孫の手なんてあったかな~と思いながら、
黙って観察していると、父はおもむろに孫の手にニベアを塗り始めました。
「この人はなぜ孫の手を保湿しているんだ」と疑問に思いましたが、
よく見ると、孫の手の「手の甲」のつるつるした部分にだけ、ニベアを塗っているようです。
すると、そのまま孫の手を持ち、
器用に自分の背中へとニベアを塗っているではありませんか。
流石に耐え切れなくなった私は、
「なにしてんの!そうやって使うもんじゃないやろそれ!(笑)」
とツッコみました。
「いや~、最近乾燥してきて背中かゆいから、
ニベア塗ろうかと思ったら、自分の手では微妙に届かんわけよ。
それで母さんに「塗ってくれ」って頼んだんやけど、断られてな…。
考えた結果、この方法に行き着いたんやわ…。」
やや不揃いにニベアが塗りたくられた、その背中からは哀愁が漂っていました。
そして、久しぶりにまじまじと見た父の背中は、
昔よりも少し小さくなったように感じられました。
そんな背中を見ていると、
「出来る限り親孝行しないとな」という気持ちが湧いてきたので、
「俺が塗ろうか?」と申し出ました。
が、「いや、ええわ」と即断られました。
なんでやねん。
まぁ確かに、
大人になった息子が、
いい年をした父親の背中にニベアを塗る図は、
親子と言えどちょっとキツいか…。
しかしその後しばらくして、なんと私も乾燥で背中がかゆくなり始めました。
体質や肌質は遺伝します。血は争えないのであります。
私も早速保湿クリームを塗ろうとしましたが、やはり微妙に届かない。
妻に、「これ塗って~」と頼みましたが、
「それくらい自分でやりな!」と断られました。
孫の手、買おうかな…。